読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

六つの村を越えて髭をなびかせる者 西條奈加著 PHP研究所 2022年

 本当のアイヌの姿を、世に知らしめたい―― 時は江戸中期、老中・田沼意次が実権を握り、改革を進めていた頃。幕府ではロシアの南下に対する備えや交易の促進などを目的に、蝦夷地開発が計画されていた。 出羽国の貧しい農家に生まれながら、算学の才能に恵まれた最上徳内は、師の本多利明の計らいで蝦夷地見分隊随行する。そこで徳内が目にしたのは厳しくも美しい北の大地と、和人とは異なる文化の中で逞しく生きるアイヌの姿だった。イタクニップ、少年フルウらとの出会いを通して、いつしか徳内の胸にはアイヌへの尊敬と友愛が生まれていく。
 だが松前藩はそんなアイヌを押さえつけて搾取し、ロシアからの脅威も見てみぬふり。徳内らがこの窮状を幕府に伝えようとした矢先、十代将軍家治が逝去、田沼意次が失脚。代わって政権を握った松平定信は、田沼憎しとばかりに田沼の政策全てを否定し、蝦夷探索は無に帰した。
 職を失った徳内は、それでも蝦夷地への思いは絶え難く、南部藩へ赴く。蝦夷を目の前にしながら海を渡れず、妻を迎えて二年後。クナシリアイヌが圧政に耐えかね、とうとう乱を起こした。乱自体は他地区のアイヌの顔役たちが説得して抑えたが、その仔細を調べる役として、徳内とその上役 青島に白羽の矢が立つ。
 青島と共に作成した報告書は、くしくも松前藩と口裏を合わせたものになった。青島は田沼から疑惑を抱かれ、捕縛の後 獄中死する。
 青島の後釜として要職に推薦される徳内。だが青島の死に責任を感じる徳内はそれを受けられず、茫然自失の日々を送る。そんな彼に、妻は南部藩から江戸へと駆けつけ、明るく寄り添う。周囲の人々も彼を力づける。今までのことを無駄にしてはならないと。…    (帯文に付け足しました)

 最上徳内という人のことは全然知りませんでした。
 連想したのは池上永一さんの諸作品。松前藩にしろ薩摩藩にしろ、アイヌ琉球に酷い事してるなぁ。相手を軽視すると、搾取に走るのかな。世界中で植民地政策が蔓延った歴史を思うと、人類共通で陥りがちなことなんだろうな。身内に選ばれればいい領主かもしれないけど。
 『ゴールデンカムイ』のおかげでアイヌ文化の予備知識があったので、作品内の描写も具体的に思い浮かべることができました。家治逝去の折のごたごたは『大奥』で。…漫画は偉大だ(←おい;)。
 琉球と同じく、アイヌに対しても、奪うだけ奪って何も返してないなぁ。日本って政府の無能を個人の頑張りで塗りつぶして、素知らぬ顔するよなぁ。日本の変わらぬ体質を垣間見た気がしました。