読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

怖ガラセ屋サン 澤村伊智著 幻冬舎 2021年

 連作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 第一話 人間が一番怖い人も
 「俺」も妻も、幽霊より人間が怖い、と思っている。ある日会社の後輩が婚約者を連れて遊びに来た。怪談ライブで知り合ったという二人、試しにと語り始めた内容は、とある学習塾で教えている青年の過去。その塾には、俺の子供が通っていた。

 第二話 救済と恐怖と
 シングルマザーの母は、パワーストーンにハマってしまった。貧しい生活の中、「パワーを込めた」石や水を購入し、サロンに通う。身の危険まで感じた娘は、殺したい相手を手紙に書いて願う都市伝説「うえすぎえいこさん」に頼った。相手を殺すというより、母に元に戻ってほしくて。

 第三話 子供の世界で
 緑川が車に轢かれて死んだ。彼は虐めを受けていた。首謀者は僕たちオタク仲間、きっかけは牛乳キャップにイラストを描いた自家製メンコが異様に上手かったこと。絵や二次創作の才能があった緑川は かえって疎ましがられてしまった。担任教師も実態に気付かず、的外れな注意をして緑川を絶望に追い込む。やがて、緑川から夢で頼まれた、という女性が牛乳キャップを集めて事故現場に供え始めた。

 第四話 怪談ライブにて
 四人の人物が怪談を語る。曰く、とある老人ホームの一室に「落ちる」夢を見る部屋があること。廃墟に行った先輩が、以来、幻視や物忘れが酷くなったこと。窓の外を横切る女性が萎びていくこと、デビュー間近のインディーズバンドのボーカルが、雪山に飛び出して凍傷で指を失ってしまったこと。やがて、客の中にいた女性が、飛び入りで新たな怪談を語り始める。真相を含んだ怪談を。

 第五話 恐怖とは
 古いアパートを張り込む男。車中で人気俳優の不倫を追っている最中、情報屋を名乗る女が乗り込んで来た。女性は彼の境遇を尋ねて来る。

 第六話 見知らぬ人の
 くも膜下出血で入院した。後遺症で記憶があいまいなまま、見舞いに来る妻と思い出の擦り合わせをする毎日。向かいのベッドの老人にも、若い女性が毎日見舞いに来ている。妻が話を聞いてみると、老人の知らない女性が、毎日見舞いに来て、訳の分からないことを言って帰るのだという。しかもその女性の姿は、老人と自分と妻の三人にしか見えてないらしい。

 第七話 怖ガラセ屋サンと
 「怖ガラセ屋サン」の都市伝説について調べる男。以前にも雑誌等で記事を書いていた人物はいたようなのだが、行方不明になっているらしい。…

 それぞれ独立した短編集かと思いきや、後半でだんだん繋がって来ました。「怖ガラセ屋サン」の名前はまちまちなので、その辺りは都市伝説に倣ってるんでしょうか。
 面白かったです。二重、三重のどんでん返し。「誰より人間が怖い」と言ってる人には、ちゃんと(?)人間が怖がらせるのね~。
 これも続編が出るんでしょうか。我が身の在り方も思い起こしつつ、でも逆恨みされる、ってこともあるからなぁ。今回、そういうのはありませんでしたが。