初出は2008年。
年の瀬、新月高原スキー場に脅迫状が届いた。犯人は、数あるゲレンデのどこかに、雪が降る前に爆弾を仕掛けたと言う。経営陣は損失を怖れて警察には通報せず、言われるまま身代金を払うことを決意。だが、それは一度では収まらなかった。小出しにされる情報に踊らされ、二度、三度と繰り返される大金の受け渡し。スノーボードの大会を控えて、コース作製の時間も迫っているのに、場所の決定もできない。ゲレンデの責任者倉田は、今期使用していない北月エリアへのコースの設営を進言するが、上層部は何故かいい顔をしない。北月エリアは場所が不便である他に、昨年、コース外から飛び出して来たスノーボーダーが女性と接触した死亡事故が起きていた。被害者の夫と子供は今年も来訪していて、彼女の死を乗り越えるべく北月のゲレンデを滑りたい、と言う。
倉田の部下のパトロール隊員は、逃げる犯人を 独断で追うが、金は持ち去られてしまった。だが犯人は「取引は失敗」とゲレンデ爆破を予告してくる。この食い違いはどうして起きたのか、犯人の真の目的は。…
先日、東野圭吾さんの全著書解説本を読んで、気になった一冊。丁度書架にあったので借りてみました。
何だろう、懐かしい(笑)。作風が変わる前の東野作品に近い感じ、キャラクター重視ではなくてプロットありき、みたいな。脅迫犯の正体や本当の目的には素直に驚きましたし、終わり方も爽やかで読後感よかったです。子供にスキーを無理強いするお父さんには、もうちょっと長い目で見てやれば、とは思いましたけど。それにしても、スキーヤーやボーダーさんやら、わがままな人が多いのね~(苦笑;)。
東野さんの、経営者も含めて、ゲレンデに関わる人たちへの愛情が垣間見える作品でした。