読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

リカーシブル 米澤穂信著 新潮社 2013年

 ネタばれになってる気がします、すみません;

 父が失踪して、「わたし」ハルカはママと弟と、ママの故郷に引っ越して来た。ただ、わたしとママは血が繋がってない。ママの連れ子だったサトルとも。
 ママにも学校にも気を遣う日々。でもサトルとは、バカですぐぐずるから、しょっちゅう険悪な雰囲気になってしまう。そんなある日、サトルは「予知能力」を発現しはじめた。登校途中にある橋を「太った人が落ちたことがあるから怖い」と言い、八百屋の店先から野菜をくすねるおじさんを「知っている」と言う。引ったくり犯の逃げた先まで当てて見せた。看板を見たことがあるとも言うが、ママ曰く、サトルはこの町に来たことはないらしい。ハルカはこの地に「タマナヒメ」という伝説があることを知る。この町に危機が訪れるたび繰り返し現れ、その身を犠牲にして町を救うらしい。その言い伝えを教えてくれた学校の先生は、交通事故にあってしまった。
 サトルはタマナヒメの生まれ変わりなのだろうか。「高速道路が通ればこの地も再び繁栄する」と信じている寂れかけた地方都市で、何が起ころうとしているのか。…

 米澤さん、オカルトもやるの??と思って読み進めたら、不可思議な事象にもちゃんと説明がつきました、よかったよかった。とはいえ、「タマナヒメ」を素直に受け入れるリンカには「え???」ってちょっとぞっとしましたけど。息子を売り渡した母親にも。
 ハルカの一人称として書かれた文章が非常にクールで冷めていて、それだけに母親から「面倒を見るのは中学まで」と言い渡され、「待ち人来る」のおみくじを延々引いていたことが明かされ――というくだりには胸が詰まるものがありました。あれもミスリードの一端だったのかしら。
 弟との仲はよくなったのかな、でもあのおかあさんと一緒ではなぁ、これからも幸薄そうだなぁ。ほろ苦いラストでした。