読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

婿どの相逢席 西條奈加著 幻冬舎 2021年

小さな楊枝屋の四男坊・鈴之助は、相思相愛のお千瀬の生家、大店の仕出屋『逢見屋』にめでたく婿入り。誰もが羨む逆玉婚のつもりが……

鈴之助、今日からはおまえも、立場上は逢見屋の若主人です。ですが、それはあくまで建前のみ。何事も、最初が肝心ですからね。婿どのにも、しかと伝えておきます」
鈴之助の物問いたげな表情に応えてくれたのは、上座にいる義母のお寿佐であった。
「この逢見屋は代々、女が家を継ぎ、女将として店を差配してきました。つまり、ここにいる大女将と、女将の私、そして若女将のお千瀬が、いわばこの家の主人です」

与えられた境遇を受け入れ、商いの切り盛りに思い悩むお千瀬を陰で支える鈴之助
鈴之助自身も、二人の妹に懐かれず、義父との間も今一つしっくりしていない。だが“婿どの"の秘めた矜持と揺るぎない家族愛は、客の家族間の諍いや揉め事を収め、上の妹お丹の八つ当たりの原因に寄り添い、大女将の秘めた過去の思い出を解きほぐし、義父母の秘密やそれから来る同業者伊奈月の嫌がらせ騒動を収めていく。…
               (出版社紹介文に付け足しました)

 西條奈加さんの新刊。仕出し屋の入り婿が己の居場所を確保していく物語。ぎゃふんと言わせるとかやり込めるとかではなく、善意とフレンドシップで、ってとこが今どきと言うか、気持ちのいい所ですね。
 登場人物みなさん魅力的なんですが、鈴之助の上のお兄さんが肝でしたね。他人と共有できる感情は笑いだ、だから何よりの薬になるんだ、ってくだりなんかは成程、と思いましたし。今の世のカウンセラー、潤滑油のような存在、でも現金収入がない、ってのはなかなか辛いものが…(笑)。
 シリーズものとして十分な設定、続編がありそうで楽しみです。赤ちゃんまだ産まれてないですしね。