読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

まぜるな危険 高野史緒著 早川書房 2021年

 ロシア文学+SFの超絶リミックス6編。

 アントンと清姫
 クレムリンにある鐘の皇帝(ツァーリ・コロコル)と道成寺を掛け合わせた作品。
 交換留学生として日本に来たオレグスは、花見で賑わう東京を楽しんでいた。叔父はつくばで加速器を使用し、〈時間砲〉の研究をしている。叔父はロシアのスパイだったアントンと清姫との悲恋を救おうと計画していた。

 百万本の薔薇
 ブレジネフの国葬に、真っ赤なバラが必要だ。フィーリンはグルジアの植物試験場に向かう。そこはここ数年、所長をはじめ行方不明者が数多く出ていた。バラの芳香が満ちる町で、真相を解明しようとしたフィーリンもまた、記憶が途切れる不可解な現象に襲われる。

 小ねずみと童貞と復活した女
 『屍者の帝国』の世界観に『ドウエル教授の首』『白痴』と『アルジャーノンに花束を』その他を入れ込んだ作品。
 「俺」パルフョンはナスターシャを殺した筈なのに、何故か彼女は生きていて裁判で証言し、無罪になった。一緒にいたケルン教授に、「霊素」をとどめ置く屍者製造の処置を受けたらしい。生きながらその処置を受け天才となったムイシュキン公爵、頭部だけ黄泉がえりさせられたシュナイダー・ドウエル教授。ナスターシャを成功例として見世物にしようとするケルン教授を追って、スイスへ、やがてロンドンへ。ケルンの呪縛を逃れる為、自分で開発した薬を使って より高次の存在となったムイシュキンと共に、パルフョンはナスターシャを追い、逃げる。

 プシホロギーチェスキー・テスト
 『罪と罰』と江戸川乱歩『心理試験』を組み入れた作品。
 ラスコーリニコフ青年は質屋の老女を殺し、金を奪うことを考えていた。と言いながらも今一つ踏ん切りがつかない彼の目に留まったのは「心理試験(プシホロギーチェスキー・テスト)」と題された一冊の古本。60年後の未来、1925年に発行されたと記されているその本には、自分と同じことを考え、実行し、破滅していく一人の青年の物語が書かれていた。彼はその本を参考に殺人を犯し、ポルフィーリー予審判事の追跡を逃れる。それでもラスコーリニコフ青年を疑ったポルフィーリーは、彼が手に入れたらしいエドガワ・ランポの本を手に入れようと奔走する。 

 桜の園のリディヤ
 『桜の園』と佐々木淳子『リディアの住む時に…』オマージュ作品。
 「桜の園」と称される荘園に迷い込んだ学生ペーチャ。初めて来た土地の筈なのに、地主の娘アーニャは、彼を「8年振りに来た」「まったく年を取ってない」と大歓迎で迎えてくれる。館に住むのはきっちり8歳ずつ年の離れた人々、家庭教師や小間使いもいるのに、みな何故か顔立ちが酷似している。彼らはついこの間発表された、アインシュタインの論文を気にしていた。引っ越し先にも持って行きたい、と。
   (…男装は無理じゃないかな;;)

 ドグラートフ・マグラノフスキー
 『悪霊』と夢野久作ドグラ・マグラ』を結び付けた作品。
 精神病院で目覚めた「私」は、自分が誰だか分からなかった。担当医のワカバヤーシン博士は 自分で記憶を取り戻さねばならないと、VRゴーグルを「私」に取り付ける。次々に現れる世界は、どこまで現実でどこまで虚構なのか。…

 う~ん、がっつりSF(笑)。
 内容的によく混ぜたな~、というのが第一印象。こちらにもっと知識があれば、きっとずっと楽しめた筈、というのがありあり分かるのでそれも辛い所でした(苦笑;)。
特に『小ねずみと~』なんかは最後に載ってる参考文献よりももっと小ネタが散りばめられている筈で、私が分かるだけでも『2001年宇宙の旅』(デイジーデイジー!)とか、シャーロック・ホームズ(というよりジョン・H・ワトソンか)とか。もしかしたら『那由他』も入ってないか? 確実なとこでは、これキャプテン・フューチャーじゃん!?って気付いた時のあわあわした嬉しさったら!(笑)
 各編の前にある説明書きがまた楽しくてですね、巨大すぎて吊り下げられない、重量も量れない鐘とか、『罪と罰』の説明とか。で、ですね。私も佐々木淳子さんのファンなんですよ、『WHO!』持ってるんですよ。『桜の園のリディヤ』のラスト近辺の台詞は本当、そのままでした(元作を読み返す必要もなく覚えてた)。
 長編に目が行きがちですが、佐々木さん短編も珠玉で、『オパールの竜』読み終えた時の感動は今でも鮮明に覚えてます。ファンやっててよかった!って心から思ったんだよなぁ。でもそれが載ってる短編集『SHORT TWIST』は人に貸したまま読み返せないので、私は『WHO!』を読み返したのでしたよ。へへへ、私はサイン入りのイラスト集 持ってるんだぜ。…最終的に関係ない感想になってしまいました。