アンソロジー集。
夫の余命 / 乾くるみ
病院の屋上から飛び降りながら、田ノ本美衣は回想する。余命宣告を受けてからの夫との日々、日々瘦せていく夫との短い結婚生活を。
崖の下 / 米澤穂信
スキー場で、コース外を滑っていたスノーボーダー二人の男性が行方不明になった。翌日崖下に落ちたらしい状況で、一人は重傷を負って、もう一人は首を刺された他殺死体で見つかった。二人の関係として動機は十分だが、凶器が見つからない。容体が悪化する容疑者を自白させるには、決定打が欲しい。被害者は何で殺されたのか。
投了図 / 芹沢 央
コロナ禍の中、開催された将棋のタイトル戦。会場の旅館に〈棋将戦を中止しろ〉との張り紙があったらしい。古本屋を営む美代子は、そのニュースを見て疑念を抱く。張り紙の文字が、夫のそれと似ていたから。かつて棋士を目指していた夫が、そんな嫌がらせをしたのだろうか。
孤独な容疑者 / 大山誠一郎
23年前、「私」は当時勤めていた会社の同僚を殺した。ずるずると金を貸してくれたことに甘えていたが、最悪のタイミングで返済を要求して来られて逆上してしまった。複数の容疑者の中、「私」は嫌疑を免れた。当日の夜、「私」にはアリバイがあったので。
推理研 vs パズル研 / 有栖川有栖
居酒屋で隣り合わせたパズル研に、とある問題を提示された推理研の望月と織田。緑の目と青い目の人が混在する村で、青い目の人を追放するという不条理なルールのパズルを解いたのは、やはり我らが江神先輩。江神はさらに、その設定についての考察を繰り広げる。
2020年のロマンス詐欺 / 辻村深月
コロナ禍の中、地方から大学進学のため上京した加賀燿太。バイトもままならない状態で、幼馴染みから紹介されたのは、詐欺メールを送る仕事だった。グレーな仕事だと勘付いていたのにあえて見ないふりをして、追い詰められていく燿太。メールを交わしている女性は、夫から暴行を受けているという。…
辻村深月さんの新刊と間違えて予約した一冊。アンソロジーだったのね、有栖川有栖さんの短編が学生アリスのシリーズで、「うぉぉぉぉ―――――っ!!」と心の中で叫び声を上げました。推理研メンバー全員出演で『毒入りチョコレート殺人事件』やるなんて!(笑) 「そこへ飛ぶ???」と思う箇所はありましたが、面白かったです。有栖川さん、社会人アリスでもパズル扱ってた回ありましたよね、お好きなんですね~。それにしても、全く予期してなかったから嬉しかった、思わず友人にも知らせましたよ、へへ。
乾さんの作品は疑いながらも結局騙されましたし(それにしても酷い夫だよ;)、米澤さんの作品も分からなかったなぁ。まさか氷柱じゃないよね、とは思ってたんですけど。大山さんの二重のどんでん返しにもやられました。
コロナ禍中を描いた作品もあって、筆の早さ、切り取り方に驚いたり。作家さんとしては、書かずにはいられない題材ではあるのかな。
ちょっと儲けたな、とほくほくした作品集でした。