シリーズ23作目。
ネタばれあります、すみません;
「演技の国」
本人のキャラクターを生かした映画を作ろうと、その国の人は旅人に「映画に出ませんか」と話しかける。キノたちに、シズたちに、師匠たちに。
「ペンの国」
自由な表現や報道が禁止されている国。ペンでなら好き放題できる訳ではない、と。
「ロボットがいる国」
キノたちは、以前師匠から聞いた「ロボットがいる国」を訪れた。ある日、どこからともなく来た数百体のロボットが、人間の真似をして農作業をしてくれている国。キノが到着した時には、人間はロボットと仕事を分け合って生活するようになっていた。
「ピンクの島」
フォトが、ピンク一色の町の写真を見て、そこに行きたいと言い出した。誘われたソウと共に行ってみると、町は一面真っ赤に塗られていて…。
「眠る国」
その国の人は、明るい未来と永遠の命を手に入れる為、二十歳になったらコールドスリープで眠るという。それまでにがむしゃらに働いて。
「愚か者は死んでもいい国」
独裁者が支配する国にて。清潔で機械文明が発達した、旅人にはすこぶる居心地のいい国で、キノが滞在する間に国民選挙が行われることになった。「愚か者は処刑していいか」という問いの結果が出ないうちに、キノは国を出る。出国審査所には、もう一人旅人がいた。
「戦える国」
戦争の跡の中を、バギーで走るシズ一行。だが一方の痕跡しかない。塹壕から出て来た軍人は、この国では特殊な訓練を兵士に施し、おかげで統率のとれた理想的な軍隊ができていると語る。
「狙撃犯のいる国」
科学技術の発達を抑えている国で、連続狙撃事件が起きている。この国ではそんな長距離を撃てる銃はない筈。やがて、女性検死官が誘拐され、警察署長への殺害予告が届いた。キノは『フルート』で、犯人を確保するよう依頼される。
「始まりと終わりの国」
誰もいない終わった国で、キノは昼寝をしていた。そこに、かつての住人が一人戻って来た。何でも忘れ物を取りに来たのだとか。
「赤い霧の湖で」
師匠と男はカーフェリーなるものに乗って、湖を渡ることに。この湖には赤い霧が湧いて、その毒で大人は死んでしまうらしい。何故か子供には被害が少なく、故にフェリーでは貧しい子供が働いていた。だが、一人の少女が霧に曝露し、瀕死の状態に陥る。向こう岸から来るフェリーには彼女の恋する少年が乗っていると聞いて、男はこっそり少女と少年を引き合わせようとする。
巻末あとがき的スペシャルショートストーリーとして、一本の紐から地雷、ボート、国民が皆引っ越した後の無人の国を手に入れる『わらしべキノの旅』。…
『ペンの国』は一体何があったんだろう、SNSが悪い方にだけ発達した感じなんだろうか、と妙に今のご時勢を思ってしまいました。
『ロボットのいる国』、相手の目的はともあれやっぱり羨ましいなぁ。志を高く持っていれば、酷い目にはあわないということで(笑)。ロボット三原則がちゃんと守られてるのが何だか嬉しかったです。
合理主義をとことん突き止めて理想の軍隊を作って、それ故に狙われ続ける矛盾。ほろ苦い世界も健在ですね。
年に一冊の刊行は順調ですね。次はまた来年かな。