読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

蒼色の大地 薬丸岳著 中央公論社 2019年

螺旋プロジェクト明治篇。

 青い目を持つ灯は、幼い頃から村の人々に村八分にされ、憎悪を向けられて生きて来た。彼を育ててくれた村長の爺が死んだことを切っ掛けに 灯は村を出、流れ流れて瀬戸内海の鬼仙島に辿り着く。
 新太郎と鈴の兄妹は、村の中で唯一 灯に心を寄せていた。盗賊に襲われても唯々諾々と従うしかしない村の在り方に愛想を尽かし、新太郎は鈴を引き連れて村を出る。横浜の市場で下働きをしている所を、何故か海軍司令長官 山神に見出され、過分な援助を受けて海軍兵学校へ入学、エリート街道を走ることに。だが、争いごとの嫌いな鈴とは折り合いが悪くなっていく。
 鈴は灯を忘れられず、鬼仙島に青い目の人間が集まっているという噂を聞きつけ、一縷の望みを抱いて島に渡る。島では虐げられた人々が集まって海賊となり、海軍の戦艦を奪取、日本政府に、ひいては海族に戦を仕掛けようとしていた。山神司令官も、海軍の力を借りて海賊を叩き潰そうと画策する。同僚の命を捨て駒にし、英国人まで巻き込んでも辞さない計画に、新太郎は海賊を憎しみながらも、山神に疑問を抱く。
 近くに寄れば吐き気がするほどの嫌悪感を抱く灯と新太郎。だが、どちらもが鈴を大切に思い、鈴は灯を思う。いよいよ海軍に攻撃される鬼仙島、灯たちは争いを収めようと奔走する。…

  何故だかとにかく時間がかかった一冊。どうしてなんだろう、読み易いんですけどねぇ。
 他のシリーズで出てきた大塩平八郎の息子らしき人物が出てきた時にはおお、と思いましたね。灯やその兄弟の本名が貴仁、信仁だとか、これは安徳天皇の系譜が続いてる、ってことなのかな。同一作家の作品じゃないのに繋がってる、ってのは感動しましたよ。
 山族でありながら、海族に好意を抱く少女が現れましたが、ここで諍いを終わらせる訳にはいかないのが辛い所、とにかく相容れない、ってのが基本設定ですものね。
 さて、次は昭和初期みたいです。