読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

銀花の蔵 遠田潤子著 新潮社 2020年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 大阪万博に沸く日本。絵描きの父と料理上手の母と暮らしていた銀花は、父親の実家に一家で移り住むことになる。そこは、座敷童が出るという言い伝えの残る由緒ある醬油蔵の家だった。共に暮らすのは祖母の多鶴子と父の年の離れた妹 桜子、醤油杜氏の大原は近所からの通い。老舗を守る実用一辺倒の多鶴子は、芸術家肌の父とも、ふわふわと浮世離れした性格の母とも反りが合わなかった。しかも母の盗癖が、銀花の家以外での立場をも悪化させる。
 銀花が蔵で座敷童を見てから、家族の関係はさらに拗れて行った。多鶴子は座敷童を激しく否定し、銀花は自分が母の連れ子であることを知らされる。父は跡取りとしての自分の存在価値を見失い、やがて大原と共に近所の川で溺死体で見つかった。桜子は厳しい母に反発して出奔、母の盗癖を庇おうとしてくれた大原の息子 剛は、誤って人を殺してしまう。
 醤油蔵を継ぐ決意をした銀花は、身を粉にして働く。やがて見つけ出した剛と共に醤油を作り、桜子が産んだ双子を育てて行く。…

 遠田さん、今度の舞台は奈良ですか! 万城目学さんがサイン会や講演会で「次はうちの地域を…」とか言われるそうですが、遠田さんも順番待ちされてるのかな(笑)。
 相変わらずの遠田節満載。不幸な生い立ちの人間の、ドラマチックな人生。すらすら読めたのですが、ただ今回はあまりノれませんでした。
 何でかなぁ、主人公の銀花が自分のことを「へらへら」と評するんですが、何しろ読者はバックボーン知ってるんで、そう見えないんですよね。あと、醤油製造や販売についての苦労や工夫にもう少し踏み込んでほしかったりとか、借金返済の詳しい描写がいまいちなかったりとか。双子が成人してからの快進撃は分かるんですが、それまででも七五三に袴誂えてあげたりとか、大学も多分私学に行ってるし、生活に困ってる雰囲気が伝わって来なくて。…ってのは過去の遠田作品でも思ったことあったっけ。二度に渡っての多鶴子の告白は、う~ん、喋らせちゃったか、とも思ってしまいましたねぇ。まぁ、多鶴子しか真相は知らないから、話させるか日記が出てくるかしかないんですが(苦笑;)。
 自分が血の繋がらない子を育てることで、父親の自分への愛情を確信していく展開は、成程、と思ったのですが。「おみやげの天才」って、そうそう、そういう才能のある人いますよね~。
 そうそう、桜子さんは、よく双子を3歳まで自力で育てたよなぁ。シッターさんでも雇ってたのかしら。学校等に行く前に、手放したかったってことなのかなぁ。何か、スカーレット・オハラを連想しました。