読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ツナグ 想い人の心得 辻村深月著 新潮社 2019年

シリーズ2冊目。

 プロポーズの心得
紙谷ゆずる、駆け出しの役者。戦隊もののブルーに選ばれて、只今人気上昇中。同じ役者仲間の嵐美砂を憎からず思っている。交際を申し込んだが、断られてしまった。どうやら高校時代に亡くした親友のことを、未だ気に掛けているらしい。――二人を会わせてあげられないか――。ゆずるの思いは使者に遮られ、それなら、とゆずるは別の名前を持ち出す。それなら、自分と自分の父親を会わせてくれないか。

 歴史研究の心得
依頼人 鮫川幸平は元教員。地元の名士、歴史上の人物に会いたいという。戦国時代、農民を兵士として出すことを拒否したという逸話を持つ上川岳満、らしくない和歌も残っている。彼の真意を知りたい、と鮫川は使者に面会を申し込む。

 母の心得
重田彰一・実里夫妻は、6歳の娘に会いたいと言った。水難事故で5年前に亡くしてしまった娘。小笠原時子も娘に会いたいと、但しこちらは20年以上前に26歳で乳癌で逝ってしまった娘。ドイツ留学をして、向こうで伴侶を見つけてきた娘、だが時子はその結婚に反対してしまった。
同じ日、ホテルの別室で会った二組の親子は、それぞれ「ごめんね」と「ありがとう」を伝える。

 一人娘の心得
歩美の取引先 鶏野工房の大将が死んだ。大将の一人娘 奈緒は同じ道を歩みたいと密かに大将に伝えていたらしい。彼女がデザインした玩具を、大将はどう思っていたのか、答えは聞けなくなってしまった。だがそれを確かめる術がある。それを奈緒に言うべきか、これも"ご縁”ではないか、歩美は思い悩む。

 想い人の心得
祖母の時代から、同じ人物に会いたい、と何度も言ってくる老人がいる。蜂谷茂、料亭のオーナー。修業先のお嬢様 絢子に会いたいと言う。婚約者もいたのに16歳で世を去った絢子。蜂谷は絢子に見せたいものがあった。ただただ、彼女を喜ばせたいものを。…

 個人的に、こういう作品を読むのが辛いような沁みるような。自分だったら誰に会うかな、というようなことを思うようになったからかな。
 悔いのない別れ方ってのは難しいもので、突然の別れなら尚更。それだけに、使者に頼らない奈緒の決断は見事で、裏を返せばそれだけの交流を生前からしてきたということ。それを象徴するのが多分小笠原時子の存在で、逆縁後を生きてきた人の美しさ。そういえば私も母に「丈夫に産んであげられなくてごめん」みたいなことを言われたことがありましたっけ。これは教えてほしいことと伝えたいことの差なのかなぁ。歴史上の人物にも、結局こちらから伝えたことに感謝されてましたものね。

 こまっしゃくれて可愛らしい次当主も出てきましたね、秋山杏奈ちゃん。奈緒は歩美の伴侶になるのかな。どうやらシリーズ続きそうな気配ですね。