読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

営繕かるかや怪異譚 その弐 小野不由美著 角川書店 2019年

シリーズ2作目。連作短編集。

芙蓉忌
10年以上帰っていなかった実家に戻った。両親も弟も既に亡い。古い町屋の二階、亡き弟の部屋の壁穴から見えた隣には、三味線を爪弾く女の姿が見えた。隣家は料亭、だがそこの女将はそんな女はいないという。戸惑うが、あの女を見ることは止められない。ある日庭師が訪れて来て告げる。「あれは、あなたの命を取る」

関守
歩行者信号で鳴る「通りゃんせ」が怖い。どうやら、幼い頃遊び場にしていた神社に関係があるようだ。自分は確か、忘れ物を取りに戻って、鬼に出会った――。怯える妻を、夫は現場に行ってみよう、と誘う。そこには丁度その神社への木戸を修繕している男がいた。

まつとし聞かば
子供に、飼い猫が死んだことを言い出せない。祖母が意識不明に状態にあることも、別れた妻が死んで、そちらの親が子供を引き取りたいと言ってきたことも。だが子供は、夜中猫が帰って来たという。腥かったとも。

魂やどりて
リフォームが好きだ。古い借家を、手軽に、工夫と発想の転換で、最低限の資金と労力で。だが周囲にはあまり感心されない。手間暇かけている隣人が一目置かれている風なのが、何だか面白くない。だがそのうち、自分を罵る女の姿が見えるようになる。

水の声
付き合っていた男性に、結婚できないと言われた。自分にはその資格がないのだと。幼い頃、川でおぼれた幼馴染みを見捨てた過去がある、以来実家に戻ると子供の姿が見える、臭いまでする。一緒に遊んでいたもう一人の幼馴染みもいなくなってしまった。気遣ってくれていた父親を亡くし、リフォームの必要もなくなってしまった。話を聞いて、男は一人の営繕屋を紹介される。

まさくに
古い祖母の家に越してきて、押し入れにプライベートの空間を作ることを思いついた。その天井から屋根裏に上がれることに気付き、上がってみると見事な空間が広がっている。秘密の、一人の空間を楽しんでいたのも束の間、そこに血だらけの男が見えてしまった。入院している祖母は、「まさくにさん」とそれを呼んだ。…

 うん、やっぱり面白い。営繕で解決するということは、基本ハッピーエンドなんだな、と今回気が付きました。だから後味もいいんだよな。

 身につまされたのは『魂やどりて』の語り手。いや、私自分でリフォームとかはしないし、ましてやたんすの引き出しを踏み台にしようとは思わないけど(何より勿体ない;;)、でも仏壇と気付かず棚に使う、ってのは私もやりそうだなぁ; リカちゃんハウス等々を買って貰えなかった身としては、石鹸箱を積み重ねて箪笥に見立てて、ってのを小さい頃やってたんですが、主人公が考えてたのもその延長のような気がして。でもリサイクルできるもの、って結局造りがいいもの、職人さんがしっかり造ったもの、ってことになるんだろうからなぁ。

 営繕屋の尾端さんが、基本ちょっとしか出てこないんですよね。下手すると名前も出てこない(笑)。この人の生い立ちも知りたいものです。